石灰性腱炎

突然肩が激しく痛んで腕が上がらなくなる『石灰性腱炎』。原因と経過、エコーでわかること、石灰を洗い流す治療までを図解で解説します。

患者さま向け説明資料

肩の石灰性腱炎
(石灰沈着性腱板炎)

突然の激しい肩の痛み――その原因は、肩の腱にたまった「石灰(カルシウムの結晶)」かもしれません。

この資料では、病気のしくみ、エコー(超音波)検査でわかること、そして当院で行っているエコーガイド下の石灰洗浄治療についてご説明します。

どんな病気?

肩を動かす筋肉の腱(腱板)の中に、リン酸カルシウムの結晶(石灰)が沈着する病気です。最も多いのは腕を持ち上げる棘上筋(きょくじょうきん)の腱です。

石灰がたまるだけでは痛まないことも多いのですが、体が石灰を吸収しようとするときに強い炎症が起こり、「夜も眠れないほどの激痛」「腕がまったく上がらない」という症状で発症することがよくあります。

肩峰(けんぽう)= 屋根の骨 石灰のかたまり 腱板(棘上筋腱) 上腕骨頭(腕の骨)
腱板(赤)の中に石灰(黄)が沈着したイメージ。骨と骨の間の狭い場所なので、炎症で腫れると強く痛みます。

なりやすい方

40〜60歳代に多く、女性にやや多い傾向があります。使いすぎやケガがなくても起こります。

五十肩との違い

症状は似ていますが原因が異なります。エコーやX線で石灰を確認できれば区別がつき、治療法も変わります。

石灰は「一生もの」ではありません — 3つの時期

石灰は できる → 落ち着く → 体に吸収される という経過をたどります。実はいちばん痛いのは、石灰が溶けて吸収されていく時期です。

① 形成期 石灰がたまる時期 痛みは軽いか、なし ② 静止期 石灰が硬く安定 無症状のことも多い ③ 吸収期 石灰が溶け出す 激痛はこの時期! 吸収期の石灰は歯みがき粉〜ミルク状にやわらかくなっています

自然に治ることも

吸収期を乗り越えれば石灰が消えて治ることもあります。ただし吸収がなかなか進まず、数か月〜数年痛みを繰り返す方も少なくありません。

急性期の激痛には

炎症を抑える治療(注射・お薬)で数日〜1週間ほどで強い痛みはやわらぐことがほとんどです。我慢せずご相談ください。

当院の診療の特長

エコー(超音波)検査でわかること

当院ではエコーを使って、石灰の「場所・大きさ・硬さ」をその場で確認しながら診療します。

痛くない・被ばくゼロ

ゼリーを塗って当てるだけ。放射線を使わないので何度でも安心して経過を確認できます。

動かしながら見られる

腕を動かした時に石灰が骨とぶつかる様子など、「痛みの瞬間」をリアルタイムで観察できます。

硬さまで見分けられる

X線ではわからない石灰のやわらかさ(=吸収期かどうか)を推定でき、治療方針の決定に直結します。

そのまま治療に使える

エコーで針先を見ながら、石灰を狙って正確に注射や洗浄治療ができます(次のページ以降で説明)。

エコーではこう見えます

石灰は超音波を強く反射するため白く光って見えます。硬さによって見え方が変わり、これが治療方針のカギになります。

硬い石灰(形成期・静止期) 白い弧の下に「黒い影」がくっきり ← 白く光る石灰 ← 音響陰影(影) やわらかい石灰(吸収期) 境界がぼやけ影は薄い/周囲に血流(赤点)=強い炎症
エコー画像の模式図。実際の診察では、ご自身の肩の画像をその場でお見せしながら説明します。
見え方石灰の状態意味すること
白い弧+濃い影硬い(チョーク状)形成期〜静止期。急がず経過観察や体外衝撃波なども選択肢
境界ぼんやり・影が薄いやわらかい(ミルク〜ペースト状)吸収期。針で吸い出しやすく、洗浄治療の良い適応
周囲に血流信号(ドプラ)炎症が強い時期。痛みのピークと一致することが多い

治療の選択肢

石灰の時期・硬さ・症状の強さに合わせて、負担の少ない治療から段階的に選びます。

治療内容
お薬・安静消炎鎮痛薬(飲み薬・湿布)で炎症を抑えます。急性期の第一歩です。
エコーガイド下注射炎症を起こしている滑液包(かつえきほう)に、エコーで確認しながらステロイド+局所麻酔薬を正確に注射。激痛を早く鎮めます。
石灰洗浄(穿刺吸引)
バーボタージュ
エコーで見ながら針で石灰を洗い流し・吸い出す当院の中心的治療。次ページで詳しく説明します。
リハビリ痛みが落ち着いた後、肩の動きと筋力を回復させ再発しにくい肩を作ります。
体外衝撃波(ESWT)硬い石灰に衝撃波を当てて吸収を促す方法。実施施設が限られます。
手術(関節鏡)上記で改善しない難治例のみ。内視鏡で石灰を摘出します。必要時は連携病院へご紹介します。
多くの方は手術をせずに、注射や洗浄治療とリハビリの組み合わせで改善します。
当院で受けられます

エコーガイド下 石灰洗浄(穿刺吸引療法)

エコーで石灰と針先をリアルタイムに見ながら、細い針を石灰の中に進め、生理食塩水で洗いながら石灰を吸い出す治療です。外来で行え、切開はしません。

皮ふ 皮下・筋肉 腱板 エコープローブ 注射器(生理食塩水) 食塩水を注入 白く濁った石灰を吸引 石灰
針先は常にエコーで確認しながら操作するため、安全かつ正確に石灰だけを狙えます。

こんな方に向いています

  • やわらかい石灰(吸収期)がある方 — 最もよく吸引できます
  • 注射やお薬でも痛みを繰り返す方
  • 手術は避けたい方

硬い石灰の場合

吸い出しにくいときは、針先で石灰に細かく穴をあけて砕く処置(ニードリング)を行い、体の吸収を後押しします。

石灰洗浄 — 当日の流れと注意点

当日の流れ(外来・約15〜20分)

  1. エコーで石灰の位置・硬さを最終確認し、刺入ルートを決めます
  2. 皮ふを消毒し、局所麻酔をしっかり効かせます
  3. エコーで針先を見ながら石灰内へ針を進めます
  4. 生理食塩水を出し入れして石灰を洗い、白く濁った液を吸引します
  5. 最後に炎症を抑える薬(ステロイド)を滑液包に注入して終了です

治療後の注意

  • 当日は激しい運動・重い物を持つ動作は避けてください
  • 入浴は当日シャワー程度に(詳細は当日ご案内します)
  • 2〜3日、麻酔が切れた後の痛みや重だるさが出ることがあります(鎮痛薬を処方します)
  • まれに:感染・出血・迷走神経反射(気分不良)。発熱や痛みの悪化があればすぐご連絡ください

効果について

石灰がよく吸引できた場合、数日〜数週間で痛みが大きく軽減する方が多くいらっしゃいます。1回で取り切れない場合や、残った石灰が自然吸収されるのを待つ場合もあり、エコーで経過を確認しながらフォローします。効果には個人差があります。

よくある質問

Q. 治療は痛いですか?

局所麻酔をしっかり行うため、治療中の強い痛みはほとんどありません。針を進める際の圧迫感を感じる程度の方が多いです。

Q. 放っておくと どうなりますか?

自然に吸収されて治る方もいますが、痛みを繰り返したり、石灰が大きくなって肩の動きを妨げたりすることがあります。強い痛みを何度も繰り返す場合は治療をおすすめします。

Q. 保険はききますか?

はい。エコー検査・注射・穿刺吸引はいずれも健康保険の適用です。

Q. 仕事や家事はいつからできますか?

デスクワークや軽い家事は翌日から可能なことがほとんどです。重労働やスポーツは痛みの様子を見ながら、医師と相談して再開しましょう。

Q. 再発しますか?

同じ場所への再沈着はまれですが、別の腱に新たにできることはあります。気になる症状が出たら早めにエコーで確認しましょう。

ご不明な点は、診察時に医師・スタッフへお気軽にお尋ねください。

コメント