1. 「肉離れ」とはどのケガ?
肉離れは、自分の筋肉が出した力で、筋肉が引き離されて傷つくケガです。
ひとくちに「筋肉のケガ」といっても、中身はいくつかに分かれます。ぶつけて痛いのか、自分の力で切れたのかで、治り方も気をつけることも変わります。
左の3つは自分の筋力で起こるケガ、いちばん右は外からの力で起こるケガです。同じ「もも裏が痛い」でも、原因が違えば対応が変わります。
2. なぜ起こるのか — 「伸ばされながら力を出す」瞬間
筋肉は、細い筋線維の束がたがい違いにかみ合って、縮むことで力を出しています。ゴム紐と同じで、伸ばされながら縮もうとするとき、いちばん大きな力が生まれます。この力に筋線維が負けたときに起こるのが肉離れです。
起こりやすい場面
前ぶれなく「ブチッ」「バチンと叩かれた感じ」がして、その場で走れなくなるのが典型的です。
3. 起こりやすい場所
4. 重症度は「伸ばしたときの痛み」でわかります
押した痛みより、ストレッチしたときの痛みのほうが重症度をよく表します。
診察でお渡ししている学会の資料も、この「ストレッチ痛」で重症度をみる方法を紹介しています。ご自宅でも経過の目安になりますので、やり方を載せておきます。
| 部位 | 軽症 | 中等症 | 重症 |
|---|---|---|---|
| もも裏 ハムストリング 仰向けで脚を上げてもらう |
70°以上上げても痛くない | 70°〜30°で痛みが出る | 30°も上げられない |
| もも前 大腿四頭筋 うつ伏せで膝を曲げてもらう |
90°以上曲げても痛くない | 90°〜45°で痛みが出る | 45°も曲げられない |
| ふくらはぎ 腓腹筋 自分で立って行う |
ストレッチの痛みが軽い | 膝を曲げていればストレッチ痛が軽い | 膝を曲げても痛む/つま先立ちができない |
5. エコー(超音波)で何がわかるか
当院では、初診時とその後の経過でエコーを当てて確認しています。エコーはその場ですぐ見られて、何度でも繰り返せるのが利点です。痛い場所にプローブを当てながら、痛みの出どころを一緒に確認できます。
6. 重症度の分類(JISS分類)と復帰の目安
スポーツの現場では、どこが傷んだかで肉離れを3つの型に分ける方法が広く使われています。国立スポーツ科学センター(JISS)の奥脇医師が提唱したもので、型によって復帰までの期間が大きく変わるのが特徴です。
| 型 | 傷んだ場所 | 画像で見えること | 復帰の目安 |
|---|---|---|---|
| I型 筋線維部 |
筋肉そのもの(筋線維の間)。腱膜には傷がない | 出血やむくみだけが見える | およそ1〜2週 |
| II型 筋腱移行部 |
筋肉と腱のつなぎ目(腱膜)。肉離れの典型で最も多い | 腱膜のまわりに出血。傷み方によって腱膜が部分的に、または完全に切れる | およそ4〜6週 程度により1〜12週と幅あり |
| III型 筋腱付着部 |
腱が骨につく部分。腱が切れる、または骨からはがれる | 腱の断裂・骨からの剥離 | 3か月以上 手術を検討することがあります |
※ II型・III型はさらに、腱膜の傷み方で1度(わずか)・2度(部分的に切れる)・3度(完全に切れる)の3段階に分けられます。同じ「II型」でも、1度と3度では復帰までの期間が数週間変わります。
7. 治療の流れ
重症度に応じて、安静・湿布・ぬり薬・のみ薬などを使い分けます。松葉杖や装具が必要になることもあります。マッサージやストレッチは治療にも予防にも大切ですが、始める時期とやり方が重要です。自己判断で早く始めず、指導を受けてください。
受傷直後にもんだり温めたりすると、出血が広がることがあります。最初の数日は冷やして圧迫するのが基本です。
8. スポーツ復帰の条件
ジャンプ・ダッシュを再開してよいのは、反対側と同じ伸び方に戻ってからです。
- 痛みがないこと。 押しても痛くない・伸ばしても痛くない・力を入れても痛くない。この3つがそろっていることを確認します。
- 左右で伸び方が同じこと。 ストレッチしたときの感覚が、健康なほうの脚と同じ「普通に伸ばされている感じ」になるまで待ちます。
- 筋力が戻っていること。 本格的に競技をしている方は、始める前に脚の太さや筋力を測ってもらってください。左右の筋力のアンバランスは再発の原因になります。
9. くり返さないために
| 気をつけること | 理由 |
|---|---|
| ウォームアップを十分に | 冷えた筋肉は伸びにくく、急な力に対応できません |
| 疲れているときは無理をしない | 筋疲労は肉離れの危険因子のひとつです |
| 左右差・前後のバランスを整える | もも前ともも裏の筋力バランスの崩れが再発につながります |
| 伸ばしながら耐える運動を続ける | ハムストリングを伸ばしながら鍛える練習は、再発予防に有効とされています |
| ストレッチを習慣に | 柔軟性の低下も危険因子です。指導を受けたやり方で続けてください |
10. 大切なこと
※このページは一般的な医学情報であり、個別の診断・治療方針に代わるものではありません。症状の程度や競技によって適切な対応は変わります。気になる症状があるときは整形外科でご相談ください。→ 免責事項


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